■シヴァカ・ゴーマラバットの誕生
マガダ王国に、サーラヴァティーという遊女がいました。彼女はマガタ王国の首都であったラージャガハという町(現在のラージキル)で男の子を産みました。 しかし、周りの人たちに知られたくなかったのでその子を召使いの女性に渡しました。その召使いの女性は、その子を穀物ともみ殻をふるい分ける籠に入れ、ゴミの山に置いて来てしまいます。しかしちょうどそのとき、アパイラーチャクマーン王子が偶然に通りかかりました。その子を見つけた彼は、兵士に尋ねました。「その子はまだ生きているか」と。兵士は「はい」と答えその子は王子によって拾われることになります。宮殿に連れて行かれた彼は王子に大切に育てられることになります。 「彼はまだ生きていた」 という意味から「シヴァカ」という名をつけられました。また、「王子に養われた」という意味から、ゴーマラバットと呼ばれました。
彼がアートレーヤ医師の開頭手術を見ていたとき、「開けた頭蓋から虫を除くのに、手術道具を熱した方がいい」とアドバイスをし、アートレーヤ医師はシヴァカ・ゴーマラバットの理解の深さに満足し、特別な開頭術を彼に授けたといいます。 古代インドやパキスタンでは、開頭された頭蓋骨が実際に発見されています。ビンビサーラ王は彼をブッダの主治医に任命し、その後サンガの一員として活動をしました。
「四部律」には、彼に関するエピソードが6つ書かれています。最初の治療は11年間も頭痛を患っていた患者の鼻に酥(バター)で煮た薬を注ぎそれを吐き出させて治したという話。第2は痔で困っていたビンビサーラ王を湯を満たした鉄槽の中に座らせて眠らせ、患部を切り取って消毒して完治させた話。第3の治療は、柱に縛った子供の腹を刀で開き、腸捻転(ちょうねんてん)を治し縫合した話。第4は、脳手術。頭痛で悩んでいる患者に多量の塩分を含んだ食事の後、酒を飲ませて酔わせ、頭骨を刀で開いて脳を取り出し、酥(バター)と蜜で脳をよく洗い縫合して頭痛を治した話。第5も頭痛治療で薬嫌いの王に薬を与える話。第6は、数日間に渡ってブッダの中に満たされていた悪い体液を香や塗油、水浴などで治した話。このように彼の医療技術は今日でも通用するほど高いもので当時の仏教医学のレベルの高さをうかがうことができます。 |